No.1へ

No.2
No.3へ No.4へ No.5へ


京都税理士協同組合
第二十八回通常総会記念講演会

「超能力」のカラクリ −カルト事件や環境問題にも触れて−

                       講師 立命館大学国際関係学部教授
                           国際平和ミュージアム館長
 安斎育郎先生

  皆さん、 今日は。 私は原子力工学が元々の出身ですが、 平和学など色々な分野を担当しております。

その色々なことをやっている中で、 現代非合理主義批判という活動をしておりましたら、 オウム真理教から批判されまして、 危うい目に遭いました。

我が家の玄関先にも差出人不明の箱状の配達物が届けられたり、 薬がいっぱい入った荷物が研究室に送られてきたり、 4ヵ月位にわたって無言電話が夜中の1時と4時に10回ずつ欠かさずありました。

 

 オウム真理教に行っていた人は結構オカルト流でして、 ああ言えば上祐君という早稲田大学理工学部を出た人なんですけれども、 教祖が宙に浮くのは解脱の果ての超能力だというふうに記者会見で言った人ですね。

かと思えば土屋正実君というサリンを作った実行犯ですけれども、 彼の手書きメモ、 土屋メモというんですが、 その中でアストラル音楽が神の声であることを科学的に実証すると書いてあるんですね。

ちょっとオカルト流ですね。

大阪大学を出た理学博士の村井秀夫君という、 オウム真理教の科学技術庁の長官で後に殺された人物がいるのですが、 彼は宇宙科学で博士になったはずなんですが星占いに凝っておりまして、 教祖との対話の中で麻原教祖が 「これこれについてどうだね?」 と村井君に聞くと、 村井君はそれを、 「西洋占星術ではかくかくしかじかのように裏付けられております」 というふうに宇宙科学者が星占いで答えるんですね。

そういうオカルト流の集団から見ると、 オカルトというものを科学の立場で片っ端から解明している立命館の安斎とか、 皆さんご存じの早稲田大学の大槻義彦、 我が友人で彼もまた超能力を解明する同志なんですが、 一緒に批判されましてちょっと嫌な思いをしたわけです。

 ところがオウムの人々を見て立命館の学生を見ると、 オウムに入ってないかもしれないけれど、 なんとまあ似たような意識実態のことかと驚きました。

超能力を信じている学生が大体6割から7割位いるんです。大丈夫だろうかと思います。

それで大学の講義の中で特に自然科学概論という講義の中で超能力といわれているのを片っ端から解明する、 変わった授業をやりはじめたんです。

1クラスの受講者数が1760人ということもあり、 別の大学の学生も聴きに来たりして、 やはり不思議なことを解明するというのはどちらにしても面白いということですね。


 世間を見ていますと、 学生諸君ならずともオカルト流の生き方が結構蔓延してまして昨年11月12日に千葉県の成田のホテルでミイラが見つかったという事件がありました。

あれなども怪しいですね。

ライフスペース事件がありましたが、 どうも学生だけでなく世間一般に今オカルト流が流行っておりまして、 こういうことでいいのかどうかちょっと心配になっているところであります。


 私は科学の立場で色々と物を考えているんだけれども、 科学で人生が全部取り仕切れるなどとはついぞ思っておりません。

私が見るところ人生生きていて二種類の違う命題に出会うと思うんですね。

@が科学的命題、 Aが価値的命題とします。 命題というのは人間の判断や考えを文章で表したもの一般を言いますけれども、 科学的命題というのは別名客観的命題と言ってもいい。

それはどういったものかといいますと、 その命題が正しいか正しくないかということを事実と照らし合わせることで客観的に決められる命題です。


 例えば(a)3+4=7であるという命題は、 客観的に正しいか正しくないか決められますね。

雨が降った日は8の方が面白いと言っても駄目でありまして、 これは自然数というものの定義により論理的に7以外の何物でもないと客観的に判断できるまさに科学的な命題です。


 (b)源氏物語は紫式部が書いたものである。

これについても清少納言が書いたほうが面白いと言っても駄目でありまして、 歴史的事実に照らして紫式部が書いたかどうかということは客観的に決められるベきものであります。

宇治十帖につきましては本当に紫式部が書いたものであるかどうか今なお議論があるところではありますが、 いずれにしても私の趣味でそれを決めるものではありません。


 (c)今日大阪は晴れている。

これはどうかと言うと大阪が晴れている時に、 今日大阪は晴れていると言えば正しいし大阪が雨降っているのに今日大阪は晴れていると言えば、 それは間違いになる。

だからこういう命題は、 正しいことも間違っていることもあるがいずれにしても今大阪に電話して晴れているかどうかを聞けば、 この命題が正しいか正しくないかは客観的に決めることができるわけです。

だから、 事実と照らして白黒がつく命題を@科学的命題とひとくくりにします。


 ところが人生そういう命題ばかりではなくて、 A価値的命題あるいは主観的命題というのがある。

これはその命題の真偽が価値観によって判断が違うために客観的に結論付けることができない命題で、

 (a)ピカソの絵は素晴らしいという命題はどうでしょうか。

皆さんに正しいかどうか聞いたら、 きっと二手に分かれると思います。

私はマルと答えるけれども、 ピカソの絵みたいなちんちくりんでわけわからないのが良くもなんともないと思っている人が山ほどいますから、 そういう人はペケと答えるんですね。

これは近代絵画方程式というのを解くとピカソの絵は素晴らしいという答えが、 一義的客観的に導かれるという筋のものではなくて、 あくまでどういう絵に価値を見出だし、 どういう絵に価値を見出ださないかという価値の選択に属する問題でありまして、 価値観によって答えが違うわけであります。


 (b)核兵器はなくすべきだ。

私はマルと答えるけれども、 アメリカ大統領はペケと答えるでしょうね。

アメリカ大統領は核兵器を持つことによって核抑止力を効かせて、 自国及び同盟国に攻撃があるのを事前に抑止する。

そのためにこそ核兵器は必要だと思っているから、 核兵器の存在価値を認めている立場にあるわけであります。

だから私とクリントン大統領との間には核兵器の価値に関する重大な対立がそこにある。

これも価値の選択の問題であります。


 (c)人は等しく生きる価値がある。

これは私はマルと答えますけれどもヒトラーはペケと答えたんですね。

ヒトラーという人は、 人間には生きる価値のある人間と生きる価値のない人間がいると分けたわけですね。

生きる価値のない人間に分類されたのがユダヤ人とか障害者とか中毒患者とか、 こういうのは生きる価値がないとかいって、 何百万人が不本意ながら命を奪われたらしいというわけで、 こういうのは人間の生き死ににとって最も重要な命題でありながら、 しかし客観的に結論付けるわけにいかなくて、 人が人間というものの存在に等しく価値を認めるのかそうでないのかという価値の選択にかかっているわけです。


 こう見てみると人生にとって科学的命題、 価値的命題それぞれに重大でありまして、 二つとも我々は習熟しなければいけないですね。

自然科学を勉強している人々に科学だけ勉強させていてはいけないので、 それ以外のこと、 人生というのはいったいどういう価値を実現するために生きるのかという人生の生きる価値について豊かに文学作品や芸術作品に接するチャンスを与えておかないといけないですね。

だから科学者は科学だけ勉強していたのではろくなものにならない恐れがある。


 例を挙げますと、 ヒトラーのもとでV2ミサイルというドイツにいながらにしてロンドンを攻撃できるミサイルを開発したフォン・ブラウンという人がいました。

この人は戦後ケネディの要請を受けてアメリカへ渡り、 対ソ戦略兵器の大陸間弾道ミサイルで指導的役割を果たしました。

それで70年代前半に亡くなったのですけれども、 その時アメリカの新聞に出たフォン・ブラウンの死亡記事、 とても優れた記事ですが、 こう書いてありました。

「フォン・ブラウンはヒトラーのもとでV2ミサイルの開発で指導的役割を果たしたが、 別にナチズムを信じていたわけではない。

戦後はケネディの要請を受けてアメリカに渡り、 対ソ戦略兵器としてのICBM開発をしたが、 別に反ソ主義者であったわけではない。

彼にとって重要なことはいかにして大きなロケットを作り、 遠くに飛ばすかということであった」


 科学者が価値のことを考えないと自分が今発揮している科学的能力がいかなる価値を実現するために用立てられようとしているのかということに無頓着になる、 ちょっと危ない事例なんですね。


 アメリカのサムエル・コーエンという物理学者は、 中性子爆弾という水爆を開発するうえで指導的役割を果たしました。

これを開発したときの彼の記者会見、 中性子爆弾は熱線や爆風を出さずに放射能で人々を殺す兵器ですが、 これを彼なりに言うと 「中性子爆弾は爆風で手足をもぎ取るわけでなく、 熱線によってケロイドを作るわけでもなく、 放射能によって静かに敵兵を殺すだけだから、 人道的兵器だ」 と言ったんです。

つまり人を殺すことがそれ自身国家にとっての価値だってことになると、 あとは殺し方の問題になってしまうわけです。

 昭和20年8月17日にこの京都に第三の原爆が落ちるという噂がたちました。

その時、 京都帝国大学理学部物理学教室の某教授が何をしたかというと、 「目の前で京都の町が核兵器の威力で消えてゆく様を直接観察できるのは、 原子物理学者としてはまたとないチャンスだ」 と言って比叡山に観測機器を設置する準備をした。 科学者というのはそこまでいくんですね。


 だから科学者の卵には、 科学だけ習熟させるのでなく、 人生生きる価値とは何なのかということをよく考えさせなければならない。


 私は自分なりに人生には4つの価値があると学生に訴えかけています。


 @人生いかなる価値を実現するために生きるのかということを自分なりに発見することが、 まずもって大事です。


 Aこれぞ価値だというものが見つかったら、 その価値を実現するための具体的努力をすることが大事です。


 B価値実現のための見通しをたてるためにも、 自然や社会の仕組みについて合理的、 体系的知識つまり科学的な世界観を豊かに身に付ける。

川 柳

右京地区 櫻 井 武

  七人の敵にマルサが居た不覚
  税金で暮すつもりの立候補
  泥舟の狸泳げるから困る
  妻の灯がいま流灯の列に入る
  遠い日の約束が待つ九段坂

 C自分の価値を絶対化せず他者との関係において相対化することが必要である。


 だから、 人生の幸せというものは、 自分なりにこれぞ価値だというものを見つけ、 その価値を実現するために持って生まれた能力をフルに発揮して、 価値実現のために生き生きと取り組めているような状態をいうのです。


 さて、 超能力のカラクリについてなんですが、 科学の目から見てオカルト的なものが流行っている状況をどう見るかについてお話したいと思います。


 (a)ライフスペース事件ですが、 教祖が人の頭をたたくシャクティーパットとかで800万円も取る。

実にいい商売をしています。

なぜそれが病気に効くのかと聞くと、 「定説です」 で全部終わっちゃうわけですね。

実にオカルトというのは何かそう絶対的なもの、 理性が踏み込むことを許さない、 しかしそれ自身絶対真なるものなのだというものを持っているのがオカルトですね。

その後逮捕された法の華三法行福永法源氏は 「定説」 ではなくて 「天声」 と言うんですよ。

これは誠に便利で理性が踏み込めないけれど正しいのだと主張するわけです。


 (b)このシャクティパットグルはサイババの後継者を名乗っていたのですが、 サイババはご存じですか?インドの神の化身といわれているサイババ教の教祖ですね。

世界中に600万人とも700万人とも言われる信者がいる。

このサイババの信仰の中心の一つが超能力なんですね。

サイババが素手を空中で振り回すと聖なる灰 「ビブーティ」 なるものが取り出されてきたり、 長い長いネックレスが出てきたり時計が出てきたりする。

サイババの物質化現象というんですね。

出てきた時計調べてみるとセイコー社なんて書いてあるんです。

どうもセイコーのお得意さんの一つらしいのですが、 しかしこれが超能力かどうかというのでもめるわけです。

あれは簡単な手品なんですね。

私みたいに手品を50年近くやっているとすぐわかります。

サイババというのは大体芸能一家の生まれで幼い頃から舞台に慣れている人で手品の小道具を使った実績のある人なんですね。

私が手をたたいて空中からこのようにハンカチを取り出しますよね。

私がやると手品で、 サイババがやると超能力なんです。

なぜかというと神の化身はインチキやらないというわけです。

一種の肩書き信仰で思い込みに助けられて彼のやった手品はみんな超能力の域にまで昇華されていくんですね。


 我が立命館の自然科学概論の授業の中でサイババ教団の出しているビデオを使います。

サイババ教団に貢献した人にサイババがトロフィーを渡す授賞式の様子が映っています。

1人目の受賞者はトロフィーもらってそのまま引っ込むんですけれども、 2人目の受賞者にサイババは、 トロフィーを渡した途端に素手を空中で振り回すと長い長いネックレスが物質化されて出てきて、 受賞者の首に掛けて超能力授賞式が終わるというやつですね。

このビデオをインドから入手して学生に見せるんです。

で、 サイババはどこでインチキやっているでしょう、 見抜きましょうというわけですね。

1回目は、 みんなオーッとか言って驚きますが、 3回見ると、 おや?と思い始めましてね、 5回見てわからない学生はほとんどいないと思います。

助手が受賞者に渡すべきトロフィーをサイババに持って来ますね。

サイババが受け取るときにトロフィーの底の所に取り出すべきネックレスが貼りつけてありますね。

それを手のなかに仕込むんですね。

仕込んだ途端にサイババの手は変な格好になっているんですね。

それ以後ずっと同じ格好なんですが、 それで振り出してパッと出てくるから、 素人だとあれでも立派に超能力で通じていくらしくて超能力授賞式が演出されるわけですね。

私などは1回見ただけで、 あっやったとあまりうまくないなとわかるんです。


 まあこの肩書きによって惑わされるのが人の常ですね。

詐欺師なんかもよく使うんですよ。

よくあるでしょ、 消火器を売りに来るんですよ。

いかにも消防器具を扱っている会社風の制服を着てくるんですね。

それで 「消防署の方から来ました」 とうまいこと言うんですよ。

つまり消防署のある方角から歩いて来ただけのことなんですけれども。

本当は2千円でいいものを1万円で買っちゃったりするんです。

どうも肩書きとか、 見てくれに人間ていうのはだまされやすいです。


 (c)宜保愛子の霊視占い。 この頃あまりテレビに出なくなりましたが、 一頃よく出てましたね。

霊視占いを見たことありますか?目の前に女優さんなんかをおいて宜保さんが霊視するんです。

そして過去の悲しい出来事なんかをズバリズバリ言い当てるもんだから、 言われた女優さんなんかつい感極まってホロリと涙をこぼしたりなんかして。

いまから8年前、 サッカーのラモスを目の前においてやっておりました。

ブラジルではラモスはどんな家に住んでてどんな犬を飼ってて、 どんな乳母がいたかということを言い当てるんです。


 いきなり今度は場面転換で宜保さんがエジプトのピラミッドに行く様子が映し出されて、 ツタンカーメンの墓なんて霊視するんですね。

するとよせばいいのに早稲田大学の吉村作治教授が自身の研究費の捻出のために一緒にくっついて行って、 適当に相づち打ったりするもんだから、 見ている者は宜保さんの霊視力は専門家も感心させられるほどなんだって思いがちなんですが、 そんなことはありません。

霊視には種も仕掛けもありまして、3つの秘密があります。


 @宜保さんは3歳の時に左目を患ったんです。

すると精神科学の分野で、 代償性幻視というのですが、 障害を受けた方の目の働きを補うようなかたちで、 その障害を受けた方の目の網膜上にある種の虚像を感じるようになる人が多いですね。

宜保さんは6歳の時にはその働きが芽生えていたらしいです。

しかも精神科学の医学博士中村教授のお見立てによると、 宜保さんはT型直感像資質といって、 脳裏に思い浮べる映像が非常にはっきりして細部にわたって言葉で説明できるような資質を持っている。

皆さん象を思い浮べてください、 と言うと動物園で見たなんとなく鼻の長い象をぼんやり思い浮べる人から、 アフリカ象の耳のヒダの1本1本まで思い浮べる人まで色々なんですね。

宜保さんはその後者の部類で、 脳裏に思い浮べる映像が非常にクリアで細部にわたって説明できる。 だから宜保さんは6歳になると、 見える方の右目で捉えた実像に左目網膜上に浮かぶある種の虚像を重ね合わせてT型直感像資質に物言わせて実況生中継する。

嘘をついているつもりは当時なかったと思いますが、 滅多に当たらないんだけどたまによく当たるので霊感少女と呼ばれるようになりました。


 A2番目は宜保さんの見事なまでの会話術です。

「あなた小さい時動物飼っていたでしょう」 ズバッと言うんですね。

当たっちゃうんです。

スタジオ中驚くんですが、 落ち着いてよく考えてみると日本人で小さい時に何の動物も飼った経験のない人は20人に1人しかいないんですね。

私が言っても95%は当たるんだけど、 宜保さんに言われると自分が飼っていた可愛いポチのことを言われたに違いないと勝手に思い込む。

そこに宜保さんが畳み掛けるように 「その動物は死ぬ時悲しい死に方したでしょう」 当たり前ですね。

楽しい死に方する動物なんていません。

でも宜保さんに言われると、 可愛いポチが死んだ朝のあの悲しい思いがどっと甦ってきてついはらりと涙がこぼれる次第です。 これは占い師ならみんな上手なんです。


 私も上手くなりたいと思って、 近くの鴨の河原で占い師を2日間やってみました。

最初はちょっと照れて大丈夫かななんて思ったんですが5人もやるとベテランの域に達しました。

70歳くらいのお婆ちゃんが来まして、 老後3人息子の誰の家に世話になるのが一番幸せか、 という用向きで来たらしいんです。

よく聞くとすぐわかりました。

次男の家に行きたいということがありありとしている。

なぜすぐ行かないのか探りを入れると、 偉い占い師に次男の家は方角が悪いと言われたらしいんです。

私の任務ははっきりしているでしょ、 何とかして次男の所へ行ける様にして差し上げれば良い。

そこで3つの事を言ったんです。


 昔は地球は平らだと思って西と東は泣き別れだったけれど、 今は地球は丸いので西だと思ってずんずん行くと東から戻ってきてしまうんです。

方角は人生にとってあまり重要な意味を持たないのです、 とお婆さんに言いました。


 2つ目。

昔は西の方大凶というときは一旦南に行って一晩明かしてから西の方へ行くことで方角もクリアーするという知恵があるから、 「お婆ちゃん、 次男の家に行きたいのはやまやまなれど、 まず長男の家に行って、 そこで3、 4日ご厄介になって、 有難うございました、 お世話になりましたと言ってから次男の家に行けば、 長男だっていきなり次男の家に行かれるよりは真っ先に自分を頼ってくれたということで人間関係の点からも良かろうじゃないか、 そうすれば方角もクリアーされる」 と言えばお婆ちゃん、 ちょっと話に乗り出してきたので最後の仕上げに江戸時代の浪花の商人の話をしました。


 摂津・河内・和泉の三国の交わる三国丘に方違え神社というのがあります。

ここで手を合わせると大凶の方角も大吉になり、 商売で訪れる心配がいらなかったと。

お婆さん気になるなら、 ここで懇ろに手を合わせるのが万事いいけれど、 あなたは四柱推命からしても六五歳以降にしてますます運が開けると言ったら、 懐から1万円出したんですけれど、 無料でやっていたのでもらい損ねたんですが……。


 ある時一軒家に住んでいる人が来たので、 宜保愛子流をやる絶好の機会だと思って聞いてみました。

「あなたの家に松の木があるでしょう」 「ある」 と言えばしめたもの「そうでしょう、 私には全てお見通し」 と言って、 どんどん威張っちゃえばいいんです。

ところがたまに 「ない」 と言う人がいて、 その時も大丈夫、 占いのノウハウがあって 「なくて良かった。あったら大変なことになるところだった」 と言うと許してくれるんですね。

宜保さんはこれがとても上手です。


 Bところが第一、 第二の秘密だけでは宜保さんはあんなに当たるわけがない。

第三の秘密が一番大事なんですね。

超能力学の分野でリサーチというんですが、 要するに徹底した事前調査って事です。

ラモスの相手をすると決まった途端、 宜保愛子プロダクションは手の者を1人ブラジルへ派遣しまして、 ラモスが幼い頃どんな家に住んでいてどんな犬飼ってて、 どんな生活ぶりだったか徹底して調べるわけです。

これを内緒で自腹を切ってやるので、 宜保さんの出演料は著しく高いです。

宜保さんが1時間半から2時間番組に出ると1500万から2000万円なんです。

私がテレビに出演したとき、 2回で10万円に満たなかった時も、 タダの時もありました。

宜保さんだと視聴率が取れるからよく使われるんです。

 その宜保さんも馬脚を現したのが、 ツタンカーメンの霊視はできても、 オウム真理教事件の坂本弁護士一家がどこにいるのかが霊視できないというわけです。

要するに事実関係がよくわからないどうでもいいような問題ならやるけれども、 目の前で起こっている社会的事件を解決することはやらないということだったんですね。

で、 ついに評判が悪くなってテレビから手を引いたわけです。


 (d)血液型性格占い。

日本はABO式血液型と性格の間に関係があるという迷信が流行っている唯一の国です。

性格というのは、 育った環境とか親の躾とか、 色んな事によって形成されてくる。

大体血液型というのはABO式だけじゃなく、 E式・Q式・S式・Rh式とか、 白血球や血小板の血液型など60何種類もありまして、 二人が全く同じ血液型という確率は、 一卵性双生児でない限り、 6000億分の1です。

ある医学関係の学会が1万人以上の日本人を調べた結果、 ABO式の血液型と性格の間には一切関係がないと発表して、 学問的には一応解決したと思われていたんですが、 60年代に、 血液型性格判断という本が何百万部も売れたんです。

70年代には企業の経営者が 「うちの営業部はO型しか採用しない」 と言い、 80年代には京都の上京区の保育園みたいに血液型でクラス分けをするところが出てきたり。

B型の園児が泣いていると、 「B型なのにメソメソしちゃ駄目でしょう」 なんて言って叱るんです。


 東京で血液型性格を信じている学生を調べたところ差別的性格である人が多いことがわかりました。

だって、 人の本質を見ないで、 一つのことで決め付けるんですから。


 (e)日本人は霊に弱い。

仏教は本来霊の存在は説いてないんです。

釈迦の教えは古代インドの教えとは異なり、 霊を否定しました。 私は全ての仏教宗派にアンケートを取りました。

「霊についてどう説いてますか」 すると、 佛光寺の総務部長から真っ先に返答がありました。

「霊はいかなる意味においても存在しない。終り」 浄土宗や浄土真宗は釈迦の教えを厳密に守っているんですね。

それに対し、 比叡山延暦寺からの回答は 「霊は実体を持った存在である」 同じ仏教なのに全く正反対のことを言ってるんです。


 日本人の霊の教えは色々ありそこに霊感商法が入ってきて被害額1000億円という驚くべき科学の国の実態がある。


 とにかく、 人はなぜ騙されるのか?人々がオカルトに心傾けるのには5つの理由があります。


 @不合理が常態化する社会がはびこっている。

科学的合理的な考えを土台において人生を展望し、 社会をより良く変革しようと言っているんですが、 今の学生、 世の中合理的にできているのに合理的だと思っていないんですね。

核兵器が3万発あること、 飢餓と飽食、 汗水垂らして働く人が貧乏で、 楽して遊んでいる人が金持ちで、 世の中不合理だらけだと言い、 人生とか世の中はそもそも不合理なのであって、 合理的な生き方は必要ないという考えがあるんです。

都合のいい不合理は利用し、 都合の悪い不合理からはひらりと身をかわしながら、 要領よく生きるのが人生ではないか、 なんて言う人がいるんです。

我々は不合理を放っておいてはいけないのであって、 若者たちを巻き込んでどうしてこんな不合理な事態になったのか、 それを克服していく共同の努力をしないと、 いつまで経っても良くならない。


 A消えぬ先行き不透明感。 科学が進歩しても先行きがはっきりしないことが多く、 阪神大震災なんて誰も教えてくれてませんよね。

先行きが不透明だと頼るものがほしくなる。

ある若者たちは占いに頼る、 麻原教祖みたいなのが 「この道について来れば幸福になれる」 などと言うと、 ついふらふらとついていっちゃう。

青年達を不安にさせてる社会の構造的原因を明らかにして、 それを克服する努力をしなければいけないのに、 今の若い人たちは自分一人がどう動いたって世の中どうなるわけでもないとあきらめている。

自分が不安に陥ったら、 自分の魂を救えばいいと考えて、 富士山麓のサティアンへ行って個の魂の救済をする。

ところが世の構造そのものは変わっていないから次から次へと不安にさいなまれる若者が出てくる。


 B科学のブラックボックス化。電子レンジはなぜ暖まるのか、 CDプレーヤーはなぜ音が鳴るのか、 説明できませんね。

それは最先端の科学の力が民衆の理解を超えたからです。

だから、 科学が進歩すればするほどますますわけわからなくなって非科学的になってくるんです。


 C蔓延する 「知識断片型丸暗記得点期待型受験生症候群」 の影響。

今の学生は暗記ばかりの勉強で、 勉強嫌いになってしまう。「なぜ」 と問う心が錆びてしまっている。


 D悪しきマスコミ産業。 夏はオカルト、 幽霊番組が流行るんです。

科学の国だというのにテレビではオカルトを放映している。


 さて、 オカルトの世界への入り口には2つある。


 1つは思い込みです。 思い入れはいいが、 思い込みは騙されやすい。

もう1つは欲得ずくの生き方です。 楽して助かろうなどと思ってはいけない。 苦労は必要です。

騙されないためのコツですが、 「事が起こるには理由がある」 という徹底的な信念を貫く。

更に、 どんな権威筋の言うことでも一応は疑ってかかる。

また、 「そんなことできるんなら、 どうしてこうしないのか」 と考えることが大切です。


 UFOについて、 未確認飛行物体なんですが実際UFOと言われる物の95%は見間違いです。

3%は幻覚ですね。 知覚神経の異常です。 残りはウソです。 作った写真なんかがあるわけです。


 ほんの少し可能性があるのですが、 地球から一番近い生命のありそうな星まで、 光の速さで800年かかります。

本当に宇宙人がいればインタビューしたいですね。

今我が地球は環境問題で苦労してるんですが、 お宅の星ではどのように解決されましたかと。

でも宇宙人がいる可能性はほとんど無いらしいので、 やはり自分のことは自分で解決しなければいけない、 宇宙人に任せてはいけないですね。


 とにかく世の中どんな現象が起きても、 きっと原因があるということを肝に命じたいと思います。


No.1へ

No.2
No.3へ No.4へ No.5へ