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  京税協ニュース  

平成13年11月25日 第95号

No.1
学院の再生をめざして   
『民事再生法のその後』  
『企業組織再編―』を受講して

No.2へ
ソフトボール大会
  
組合の動き
     
シリーズ『京都の人』

No.3へ
テーマ「出合い」
  
丹後七姫伝説
   

No.4へ
チャリティーゴルフコンペ
京の文学散歩道
    


時代の変化に対応した
学院の再生を めざして

   −創立三十周年を前に−       右京地区 石 原   豊

 去る7月の役員改選、 8月の役割分担に際し、 図らずも学院担当副理事長の大役を仰せつかりました。

もとより浅学非才の身、 唯々恐れ入り緊張しているところであります。 昭和47年3月念願の税理士を開業

いたしました私は、 その年10月に創立された、 当組合に早速加入いたしました。

 翌48年開校された組合附設 「京都税経学院」 において有田徳五郎学院長先生、 青茂教頭先生のもとで、

経営学の講師として夜間本科生に対し週2講を担当させて頂きました。 以来早くも30年近い歳月が流れましたが

当時が懐かしく思い出されるとともに、 深いご縁を感じております。 昨今の学院運営は当時と一変し多彩な

教習科程を持つ同種の各種学校や専修学校の乱立競合下にあって、 少子高齢化、 大学の充実、 等々で生徒や

受講生の囲い込みや長期生の確保が出来ない状況となっております。

 例えれば、 常住者に対する下宿屋さんの食堂を一般レストランに転業したごとく、 そのメニューによって

お客様が有ったり、 無かったり、 多かったり、 少なかったり、 また良いメニューであり素晴らしいシェフで、

とても美味しい料理を作っていても、 宣伝が徹底していなければ成果に結びつかない。

……こんなむつかしさの中にあるのが今日の学院運営ではないでしょうか?当りまえのことですが…

○ 旬、 季節、 流行に合ったメニュー
○ 定評があり実力を備えたシェフ
○ 入り易く、 ソフトな店舗造り
○ お手頃な値段

此の様な条件が整って、 それが広く、 あまねく知れ渡っていたら、 いつも、 どのテーブルもお客様で一パイ等と

考え乍ら取組み始めましたら、 学院運営委員会の先生方は従来より、 実に良く、 この辺の理屈に合った運営を

実行して頂いていたことに気づきました。 今日迄のご苦労に深甚な敬意を表します。

● 時宣を得た、 実務講座や短期講座
● 時代が要求する知識、 技能の習得を目ざした各種講座
● 地域社会に貢献する簿記講座

等々、 実に充実した内容を豊かな内部・外部講師陣で堅め、 地域の人々に、 組合員先生に、 組合員事務所

職員や関与企業従業員対象に勉強の機会を与え続け、 全国に多くの税理士協同組合のある中で唯一、

我が京税協のみが設置する附設 「京都税経学院」 は30年の輝かしい歴史を重ねて来たのであります。

 実にきめ細かく栄養にも配慮されたメニューが、 盛りつけも楽しく、 美しく、 一流のシェフによって、

営利を追求しない公益性を持った、 プライスで、 次々と提供され続けているのです。

このあとはもっともっと多くの人々に味わって頂きたいのです。 参加してほしいのです。 そのためには、

もっともっと、 学院の活動を、 あまねく広く知って頂く必要を痛感している次第であります。

幸い創立30周年を前にして、 組織のより充実を期した組合の大改革、 支所の設置が実現し、 支所長先生、

支所幹部の先生を中心に力強く、 活発な組合運営が活動を始めました。 学院活動のバックアップにも、

大きな力を発揮して頂けるものと、 期待しているところであります。 また地域外 (滋賀税協さんや、 阪奈税協さん

等々) の隣接友好税協にもあらかじめ交渉をさせて頂き、 内容によっては、 共催の講座を持って、 構成員先生の

受講をして頂くことなど出来ないものかと考えているところであります。

有田学院長の総指揮のもと担当役員、 委員一丸となって、 学院の更なる発展のため注力いたしますので

関係諸団体・諸先生のご協力、 組合員先生の熱いご支援ご参加を心よりお願いいたしまして就任のご挨拶と

いたします。


  個別事件における注意すべき問題点と
   個人再生手続− 弁護士 橋本皇玄 先生

『民事再生法のその後』
                        上京地区 田 中 喜 雄

 昨年4月民事再生法が施行され、 その研修会を昨秋に行いました。

 その後1年が経過し民事再生手続の申立件数も全国で相当数に上っています。

1. 民事再生手続の概略

 まず、 民事再生手続について簡単に説明します。 再生手続の流れは次の通りです。


 民事再生手続開始の申立から開始決定迄の期間は概ね1ヵ月弱ですが、 平均20日間位を要している

様です。 開始決定が出れば1ヵ月位の期間を定めて再生債権の届出をします。 その後、 届出された

債権の調査をし、 再生債権が確定しますが、 これも大体1ヵ月位の期間を要します。 この間平行して

再生債務者の財産価格の評定等を行い貸借対照表の作成をし、 これらを基に再生計画案の作成が

され、 裁判所に提出されます。 その後再生計画案に対して再生債権者の意見等を聞き、 計画案の

認否の決議を行います。 この期間も大体1ヵ月位を要します。 次に、 再生計画案が正しいかどうか

検討して裁判所は再生計画を認可します。 ここで再生計画が確定します。 この再生計画を履行して、

再生債務を一定の期間で支払をし、 支払が完了すれば再生手続は終結となります。

以上が、 ざっとした流れです。

 税理士の先生方が、 再生計画案の提出以降において関与される事は殆どないと思われますが、

いちばん関与されるときがあるとすれば、 再生申立をするかどうか、 又申立した時のいろいろな

場面での協力が重要かと思います。

2. 民事再生手続一般

 民事再生法ができた背景ですが、 再生債務者にとって非常に都合がいい法律であって申立手続が

割と簡単であると言えます。

 何がいいかと言いますと、 赤字が出ている会社がその経営をそのまま続けていると何れその会社は

破綻してしまいます。 そこで、 債務の弁済が出来なくなる前に民事再生の申立をすれば、 この会社は

再生できるのです。

 例えば、 ここに肉屋さんがあるとします。 この肉屋さんの年間売上は2千2百万円、 仕入や経費の

合計を2千万円とすると、 差引き2百万円の利益が出ます。 ところが、 長期借入金の返済が5百万円

あるとすると3百万円の赤字が生じます。 この肉屋さんがこのまま経営を続けると、 何らかの形で

債務が増加して何れ破綻する事になります。 ですから、 赤字になった時点で民事再生の申立をすれば

いいのです。

 この借入の返済が5百万円であるから3百万円の赤字ですが、 年間百万円の返済にすれば百万円の

黒字がでますから再生可能となります。 ただこの場合必ず経常利益がなければ再生手続は不可能です。
(1)再生手続開始の申立から開始決定までの段階

 再建手続である民事再生法の趣旨に照らしてみますと、 申立の時期が遅く破産に近い状態での

申立が多いのが現状であると言えます。

 申立件数は、 全国で平成12年4月から平成13年3月までに906件の申立があり月平均76件という

数字が出ています。 又、 京都では29件の申立があります。 旧和議法の申立件数と比較すると

件数的にはかなりの増加ですが、 元々和議自体が極端に少なかったので単純に比較できません。

我々弁護士の立場からすればもっと申立件数が多くても不思議ではありません。 破産申立の件数が

年間数万件もあるところからすると、 果たして旧和議法の3倍・4倍あるといっても906件という件数が

多いという裁判所の意見は甚だ疑問と言えます。

 次に、 民事再生の申立要件は非常に簡単で簡素化されています。 法文に書かれている要件は、

次のとおりです。

@破産の原因たる事実の生ずるおそれがある事。

A事業の継続に著しい支障を来す事なく弁済期にある債務を弁済することができないとき。

@について簡単に言えば支払不能であることです。 ただ単に債務が多いだけではだめです。

Aについては、 債務の弁済を期日にきちっと支払っていけば事業継続が困難となる状態が続き、

何れ破綻を来すであろう状態です。

 民事再生の趣旨からすれば、 現状の申立は時期が

遅く破産に近い状態で、 我々弁護士に相談する場合が

ほとんどです。 そごうの民事再生手続の場合でも、 再生

債権の数%しか支払いできない状態で殆ど配当に近い

支払条件だったと思います。 要するに、 もっと早く再生の

申立をすれば、 もっと多くの支払が可能なはずです。 あまり債権カットが大きすぎると、 債権者から

苦情が出たり再生計画案が否決されて再生できない場合もあります。 3・4・5割の債権カットで計画案を

作成できるように早めに申立すべきです。

 ただ、 民事再生することが債権者に分かれば、 倒産したというイメージの悪さから取引先から

敬遠されてしまうということで、 仕事が続けられないという思いがあるのが現状です。 この事から、

税理士の先生方には早めに民事再生の申立を助言していただければと思います。

(2)再生手続開始決定後

 民事再生手続について、 裁判所が施行以来強調している点があります。 それは、 民事再生手続

開始の申立から再生計画の認可迄の期間を6ヵ月程度と予め決めていて、 スケジュールをきっちりと

こなしていき確実に再生計画の認可迄もっていくという事です。 次に、 再生債務者自体が事業経営の

主体であって再生債務者が自立的な経済活動をするという長所を生かしながら、 不正が行われない

ようにする為一般的には監督委員を置く場合が殆どで約8割あります。 又、 管財人や調査委員を置く

場合もありますが、 殆ど事例がありません。

 担保権の実行の制約については、 裁判所は安易には出してくれず銀行との話し合いや他の

金融機関との借り換えなどの代替処置を考えるよう促される。 事例では平成13年3月迄で

主要裁判所で数件しか認められていません。

 次に、 再生計画案の可決要件ですが、 出席債権者の過半数であって議決権債権額の2分の1以上で

あり、 申立の段階でこの程度の債権者の協力が得られるかの見通しを立てておく必要があります。

(3)税理士が顧客から再生手続開始の申立に関する相談を受けた時の注意点

@債権者の協力が非常に重要となります。 言い換えれば事前に根回しをし、 特に大口の債権者に

ついては事前によく話し合いをしておいた方がスムーズにいきます。 申立をする前から仕入先等の

重要な取引先に対して支払を滞納していたりすると、 再生後の取引に重要な影響を及ぼしかねません。

それと売上については、 民事再生の申立をしただけで売上が落ちてしまう事が多々あるようです。

裁判所からも指摘されるのですが、 認識が甘く楽観視している場合が多いようです。

A人件費を含めた経費削減を具体的にたてる。

B大口の支払をしばらく止めれば、 相当程度の経常利益が見込まれる様な資金繰表を作成する。

C仕入先や納品先が引き続き取引に応じるかの検討をする。

D申立の段階である程度具体的な再生計画案が作れるか。

(4)顧客の取引先が再生手続開始の申立をした時の注意点

@売掛金や買掛金の債権・債務があれば、 相殺権を行使して回収する。 但し、 債権の届出期間内に

通知しなければ効力はありませんので、 この点助言をしてあげて下さい。

A担保を取っていれば担保権の実行を検討する。 但し、 基本的には協力姿勢が必要である。

破産になれば債権がほとんど価値のないものになってしまうからです。

Bしかし、 他面、 財産があるのに穏匿して債権者の支払いを猶予させるための不当な申立もあるので、

再生債務者の決算書や事業報告書をよく調べて (帳簿等の閲覧請求権がある) 問題があれば、

裁判所や監督委員に上申すればよいでしょう。

Cそのためにも、 債権者説明会や債権者集会にはできるだけ出席することです。

D又、 よく誤解されている方がおられますが、 再生手続開始後に発生した債権は、 随時支払って

もらえます。 再生手続開始後は再生債権ではありませんのでその点誤解のないように説明してあげて

下さい。

E再生計画案が認可されると、 監督委員等がほとんどの場合監督しますから仮に月々の支払が

遅れると督促が出されますのでその履行はしっかりと守らされる。 債務名義の制度というものがあり、

裁判所が作成した債権表は判決と同じ効力があり、 将来に亘って滞納すれば強制執行できます。

 再生計画の履行を怠った場合、 裁判所による再生計画の取消の規定もあります。 又、 再生計画

認可後、 その遂行の見込みがない時の再生計画の取消、 そして裁判所による遠慮のない職権破産も

あります。 ただ、 法施行後まだ1年少ししか経過していないので再生債権者の履行確保の実情や現状は

まだ将来の事なので今はよく分かりません。

(5)民事再生手続と税理士業務

 再生手続の流れの中での再生債務者の補助と言う役割があります。 これは再生手続開始の申立の

理由のチェック及び再生計画案の概要の検討、 債権者集会に提出する再生計画案の作成をするという

ものです。 次に監督委員の補助をする場合は、 再生手続開始決定前に出す報告書の作成や債権者

集会提出用の再生計画案に関する報告書の作成です。 又、 裁判所の選任する調査委員には

公認会計士または税理士が選任されます。

3. 個人再生手続き

(1)民事再生法に関して、 法律の改正があり、 本年4月から個人再生手続が追加され施行

されている。

 個人再生手続が追加された理由は、 @自己破産件数の伸びが零細自営業者・給与所得者らに

多いところ、 一般の民事再生手続きでは予納金が高く申立が困難であること。 A再生計画案の

手続きが厳格で債権者の了承が取り付けにくいこと。 B自己破産では、 工場・機械・保険などの資産を

失い、 任意の整理では、 債権者の了解が取りにくいとの難点があった。

(2)手続要件

@将来において継続的に又反復して収入を得る見込みがあること。 そして、 負債の合計額は3千万円迄

であること。 但し、 住宅ローンの債権額や担保権等の別除権行使によって返済可能額を控除する。

A最低返済額は百万円若しくは負債額の5分の1のいずれか多い額です。 但し、 3千万円が限度です。

B原則として、 再生計画案に対する債権者の同意は不要です。 但し、 小規模個人再生は、 再生計画

案に対する債権者の半数の不同意及び議決権総額の2分の1を超える不同意のないこと。

C原則3年間 (5年迄延長可能) で可処分所得 (収入から生活保護基準を参考にして制令で定められて

いる生活費を控除した額) の2年分を返済する内容となっている。

(3)個人再生手続きの申立が、 予想より極めて少ない。

 当初年間1千から2千件の申立件数が予想されていたが、 本年6月21日現在京都地裁では、

小規模2件、 給与所得者34件の計36件のみである。 この理由として、 自己破産寸前の人や負債額が

3千万を超えていて手遅れの場合が多いのが現状です。 個人再生手続きほ、 手続きが難しく複雑で

時間がかかるため弁護士もこの手続きを敬遠していて破産手続きの方が簡単であるという面もあるよう

です。

(4)最後に

 債務者に住宅ローンがありローン返済を滞納している場合には、 個人再生手続きがさらに複雑で

個人再生が出来なくなる場合があるので安易に進めない方がよいでしょう。 裁判所は、 弁護士を

代理人として申立するよう指導しているところから、 弁護士がつかない本人申立はあまり勧めない方が

よいと思います。

 個人再生手続きについては施行から半年程度しか経過していませんので、 実際に再生計画が

認可されたものもほんの数件しかありません。

 個人再生についての実績・現状といったものは次の機会に譲りまして本日の講座を終了させて

いただきます。 ありがとうございました。

 奮って  お申込み下さい!
短期講座 短期講座

贈与税と譲渡所得の計算と実務

所得税の計算と申告の実務

平成14年2月4日(月)

平成14年2月6日(水)

13時30分〜17時00分

10時00分〜17時00分

講師 海沼芳晴 先生

講師 安井伸夫 先生

短期講座 

 「企業組織再編税制」を受講して

               中京地区 間 嶋 利 行

 去る10月11日に京都税経学院主催の短期講座 「企業組織再編税制」 を受講した。

 司会の学院部門の浪花健三常務理事より講師の公認会計士・税理士である平野敦士先生が紹介され

講演に入った。

 いきなり本題に入ったためほぼ満員の受講生は面食らったが講師の熱心な解説に小生も日頃の不勉強さを

痛感しながら受講した。

 以下その内容を簡単に報告する。

1. 会社分割の概要と必要性

 会社分割とは分割を行う会社 (分割法人) がその営業の全部又は一部を切り離し、 新たに設立する

会社 (新設法人) 又は既存の他の会社 (分割承継法人) に包括承継させる手続きをいい、

その必要性は、 @持株会社の下にある子会社の分割により企業の再編を促進する。 A事業部門の

分社化により経営の効率化を図り経営の監督の実効性を図る。 B独禁法の市場集中排除規制を

クリアする。 Cコングロマリット・ディスカウントの解消により株価の上昇を図る。 D中小企業の株主間の

紛争を解決する。 E現物出資や営業譲渡をより効率的にする。

2. 会社分割の4パターン・プラス1

 分割承継法人が新設会社か既存会社かにより、 又、 分割承継法人が営業の対価として発行する

株式を分割法人に割り当てる (分社型) か分割法人の株主に割り当てる (分割型) かにより、 @分社型

新設分割A分社型吸収分割B分割型新設分割C分割型吸収分割との4パターンに区別される。

 非按分型新設分割…新設分割においては、 原則として、 分割承継法人の株式保有割合は元々の

分割法人の株式保有割合通りに割り当てる必要がある。 但し、 「総株主の同意」 があれば、 当初と

異なる保有割合にすることも可能。

 実務上の要請は高いが 「非適格」 となる。

分社型…持株会社化・JV構築に便利

分割型…親会社の特定事業部門の集約・

  合弁解消に便利

3. 会社分割の会計

@分割法人

 資産・負債の金額は、 移転させた資産・負債の帳簿価格をそのまま減額する。

 資本の部の金額は、 分社型では変化なし。 分割型では分割承継法人の資本の部の増加額の

相当金額が減少する。

A新設法人

 資産・負債の金額は、 公正な会計慣行に委ねる。 営業権の計上は不可。

 資本金は、 時価承継純資産の範囲内で、 最低資本金以上であれば自由。 準備金 (分割差益金) は、

分社型では承継純資産価格のうち資本金に組み入れなかったもの (分割差益金) は資本準備金へ。

 分割型では原則として、 分社型と同様だが、 分割法人の利益準備金及び剰余金の額を上限として

その引継ぎを認めている。 なお、 税法では、 適格要件を充たす場合に限って利益積立金の引継ぎを

認めている。

B分割承継法人

 資産・負債の金額は、 公正な会計慣行に委ねる。 営業権の計上は可。

 資本金及び準備金の引継ぎは、 新設法人の場合とほぼ同様だが資本金の額は増額をしなくてもよい。

4. 債務超過の会社や欠損会社の会社分割

 分割法人や新設法人、 分割承継法人は、 それぞれが負担しなければならない債務について、

履行される見込みがあることが必要とされるため、 原則的には分割法人等にはなれない。

 ただし、 債務履行の見込みは時価ベースで考えるのであるから、 債務超過状態を解消する見込みが

あれば、 会社分割をする事は可能。

5. 税務上の取扱い

 包括的租税回避防止規定…同族会社に限らず組織再編成にかかる行為又は計算で税負担を不当に

減少させる結果があると認められるものがあるときは、 その行為又は計算に関わらず、 税務署長の

定めるところにより、 その課税標準、 税額等を計算することができる。

 税負担を不当に減少させる結果があると認められる場合の例。

・ 繰越欠損金や含み損のある会社を買収し、 その繰越欠損金や含み損を利用するため

  組織再編成を行う。

・ 複数の組織再編成を段階的に組み合わせることなどにより、 課税を受けることなく、 実質的な法人の

  資産譲渡や株主の株式譲渡を行う。

・ 相手先法人の税額控除枠や各種実績率を利用する目的で、 組織再編成を行う。

・ 株式の譲渡損を計上したり、 株式の評価を下げるために分割等を行う。

@法人における税務

 法人税法では、 法人が有する資産等を他に移転した場合には、 原則としてその移転資産に係る

譲渡損益を計上するが、 商法に則って行われた会社分割により資産等が移転した場合は基本的には

課税させない。

 しかし、 前記の租税回避のために一定の適格要件が設けられた。

〇企業グループ内の会社分割

要件1 ・ 会社分割に伴って分割承継法人の株式のみが交付され、 かつ、 分割型新設分割及び

分割型吸収分割においては分割法人の株主の保有割合に応じて分割承継法人の株式を

割り当てること。

要件2 ・ 分割法人と分割承継法人とが持株割合が50%超であること。

要件3 ・ 移転した事業に係る主な資産及び負債の移転があること。

要件4 ・ 移転した事業に係る従業者数の概ね80%以上の移転があること。

要件5 ・ 移転した事業を継続すること。

なお、 分割法人と分割承継法人との持株割合が100%の場合は要件3・4は不要。

○共同事業を行うための会社分割

要件1 ・ 企業グループ内の会社分割の要件1・3・4・5と同じ。

要件2 ・ 分割法人と分割承継法人の事業に関連性があること。

要件3 ・ 分割法人と分割承継法人の規模が著しく異ならないこと (売上金額、 従業者数、 その他

これらに準ずるもののいずれかの比率が1対5以下であること、 又は両社から常務以上の

役員の経営参画があること)

要件4 ・ 移転した資産の対価として取得した株式を継続保有すること。

 消費税法では、 資産等の譲渡等の範囲について包括承継を除くと規定されているため会社分割に

係る資産の移転は課税対象外取引。

A株主における税務

○株式の譲渡損益

 分割型分割によって、 分割法人の株主に 「金銭等の交付がない」 場合は、 簿価による譲渡として、

譲渡損益の額を繰り延べる。

〇株主のみなし配当

 適格な分割型新設分割及び分割型吸収分割については、 移転する資産が帳簿価格により引き

継がれ、 利益積立金も分割承継法人に引き継がれることから、 株主に対して配当とみなされる部分は

ない。

 短期講座 「企業組織再編税制」 のサブタイトルは 「会社分割と全面改正された会社合併を中心として」

であったが会社分割の会計と税務を中心に報告した。


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