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京税協ニュース 平成15年1月25日 第100号
新年のごあいさつ 支部連新春講演会 |
100号記念「歴代編集長等所感」 全国統一キャンペーン表彰式 であい |
「資産税に関する実務研修会」 組合の動き・理事会報告 京の文学散歩 |
「資産税に関する実務研修会」報告
中京支所 川嶋 喜弘
平成14年11月11日、 京都商工会議所において、 「平成14年度 資産税に関する実務研修会」 が開催された。
今年のテーマは、 第1部 「物納の実際−地価動向と物納制度の利用」 (藤井裕史講師)、 第2部 「商法改正に伴う中小会社と税理士の実務対応−金庫株の活用・計算書類の公開制度等の検討」
(小池正明先生) であった。
103名の先生が、 熱心に聴講された。
最近の地価動向は、 平成3年をピークに、 年々下落し、 平成14年は、 昭和62年の価額水準まで戻っている事。
一方、 物納申請件数は、 平成4年から急増し、 1万件を超えたが、 地価の下落と同様の推移をたどらず、 平成13年においても、
以前6千件以上の申請が行なわれている事等を説明された。
不景気の上、 金融機関の不良債権処理も手伝って、 現金納付が少なく、 物納申請がなぜ多いか明解に理解できた。
また、 物納の実務については、 物納制度・物納申請財産の適格性・管理又は処分をするのに不適当な財産をポイントを掲げて説明された。
商法改正は、 平成13年6月29日を皮切りに、 今日まで4回の改正が行なわれている。
今回の演題は、 自己株式の取得・処分・消却に係る会計処理・税務処理・申告調整が主であった。
小池先生は、 これらを詳細に説明された。
経済情勢が一段と深刻化する中、 私達税理士への社会的要請は、 増加の傾向をたどる。
物納業務を理解し、 商法改正に伴う実務を理解し、 委嘱者 (納税者) の信頼を得るために、 私達はさらなる研鑽をしなければならない。
京税協は、 こうした実務研修会を通じて、 先生方のお役に立ちたいと願う一方、 当組合へのご支援、 ご協力をお願いする次第であります。
組合の動き
11・27 基本問題検討特別委員会開催 (平面図の検討について)
11・29 税務便覧制作委員会開催 (税務便覧の販売状況並びに今後の検討課題について)
12・2 京都新聞社会福祉事業団にゴルフコンペ等のチャリティーを寄託
12・4 学院・実務講座開催 「所得税の基礎知識と計算の実務」 ・全10回 (9回目)
講師 太田 克 先生
参加 34名
12・6 学院・短期講座開催 「年末調整の仕方について」
講師 福田 敦 先生 参加 95名
12・11 学院・実務講座開催 「所得税の基礎知識と計算の実務」 ・全10回 (10回目)
講師 太田 克 先生 参加 34名
12・15〜16 1泊旅行下見実施
12・17 正副理事長会・常務理事会・理事会・役員委員合同忘年会開催 (於 京都ホテルオークラ)
12・24 基本問題検討特別委員会開催 (建設委員会の設置について)
12・27 仕事納め
平成15年
1・6 仕事始め
1・8 市内各税務署へ年賀挨拶
1・8 正副理事長会開催 (平成14年度後半の組合運営について)
1・9 近畿税理士会賀詞交歓会出席 (於 帝国ホテル大阪)
1・10 大同講演会・全税共表彰式事前打合せ
1・14 編集委員会 (第100号の編集割付について)
1・15 建設委員会開催 (新税理士会館の設備関係等について)
1・15 近畿税理士会京都府支部連合会新春講演会・新年祝賀会 (於 京都ホテルオークラ)
1・17 第1・第2小委員会開催 (増強策と講演打合せ)
1・17 第3回大同生命代理店新春講演会開催 (於 リーガロイヤルホテル京都)
1・18 近畿青年税理士連盟京都支部合格者祝賀会出席 (於 京都ホテルオークラ)
1・20 第17回全国統一キャンペーン表彰式開催 (於 京都ブライトンホテル)
1・20 建設委員会開催 (新税理士会館の設備関係等について)
1・23 編集委員会 (第100号のゲラ校正について)
1・23 学院・短期講座開催 「贈与税と譲渡所得の計算と実務」
講師 村中研治 先生 参加 52名
1・23 中京納税協会新年賀詞交換会 (於 京都全日空ホテル)
1・24 編集委員会 (第100号のゲラ再校正について)
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理事会報告
平成14年度第4回理事会を12月17日午後4時より開催致しました。
当日の出席状況は次のとおりでした。
理 事 46名 監 事 4名 相談役 7名
[決議事項]
第一号議案
◎組合加入承認の件
4月1日から施行された改正税理士法により、 税理士法人が創設されるなど、 当組合においても組合員資格の範囲について影響が出てきています。
できる限り組合員として加入して頂けるように当組合としても他税協・国税局等から情報を収集し、 早急に検討する旨報告があり、
今回申込み頂いている先生方については一時 「保留」 という形をとりたい旨報告がありました。
第二号議案
◎教育情報事業費並びに支所運営諸費について
今年も去年と同様に、 各支所に配付する旨報告がありました。
第三号議案
◎新規提携企業 (候補) について
住宅関連2社 (京都パナホーム株式会社・住友林業株式会社)
が新規提携企業の候補である旨報告がありました。
第四号議案
◎新税理士会館建設に伴う 「建設委員会」 (仮称) の設置について
今までどおり、 基本問題検討特別委員会で検討していますが、 建設の途上で発生する細々とした事項について決めて頂く先生方を選考していきたく、
基本問題検討特別委員会の先生の中から4〜5名を選んで 「建設委員会」 (仮称) を設置していきたい旨報告がありました。
以上、 第一号議案から第四号議案を諮ったところ全員異議なく承認可決されました。
[審議並びに報告事項]
T 財務報告の件
二股財務委員長より11月末日までの6ケ月間の財務報告があり、 前年と比べて収入が若干減少していますが、 利益については、
増加している旨報告がありました。
U 各部門報告の件
1 総務部門
○組合行事日程について…第31回通常総会の日程は、 平成15年7月25日 (金)・場所並びに時間は未定と報告がありました。
2 学院部門
○京都税経学院の各講座実施状況について…平成15年2月4日 (火) 「改正税理士法のその後」 講師は宮口定雄先生ですが、 日税連専務理事・近税会副会長をされており、
この機会に是非ご参加お願いしたい旨報告がありました。
3 保険部門
○第3回大同生命代理店講演会の開催について…平成15年1月17日 (金) 場所はリーガロイヤルホテル京都で開催する旨報告がありました。
4 事業部門
○平成14年分税務便覧販売実績について…販売枚数は、 昨年より少し上回った旨報告がありました。
○年末特別融資の斡旋状況について…平成14年4月1日施行の、 税理士法人制度に伴い税理士ローンの融資対象者及び保証人を改正した旨報告がありました。
○綜合警備 (協力店手数料の変更)・公益社 (特約葬儀団体割引カードの発行) について…公益社特約葬儀団体割引カードについては、
平成15年1月下旬頃に完成予定でカードが届き次第配付したい旨報告がありました。
○その他…新規提携先等の紹介をお願いし、 現在、 数社 (候補) という事で頂いておりますが、 今後の事業委員会で検討し、
連絡させて頂きたい旨報告がありました。
○1泊旅行の下見報告並びに実施について…箱根・富士鐘山温泉で、 宿泊ホテルも富士山の真下にあり、 そして2万坪の庭園が自慢ですので、
十分楽しんで頂き、 アウトレットにも立ち寄る予定ですので、 今回はショッピングも楽しんで頂ける旨報告がありました。
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京都市からのお知らせ
日頃は、 本市の税務行政に格別の御協力を賜り厚くお礼申し上げます。
さて、 本市におきましては適正公平な課税を行うため、 給与支払者の方に対して、 給与支払報告書の作成や提出、 住民税の納付等のPRに努めております。
また、 償却資産 (固定資産税) につきましても、 その所有者の方に申告及び納付をお願いしております。
つきましては、 顧問先の方に対して、 次の事項について御指導と御協力依頼をしていただきますようよろしくお願い申し上げます。
■住民税について
◆特別徴収事務
給与所得者に係る住民税につきましては、 所得税の源泉徴収と同様に、 給与所得者の毎月の給与から特別徴収することが給与支払者に義務づけられています。
まだ特別徴収されていない給与支払者の方につきましては、 15年度から特別徴収を行っていただく必要があります。
なお、 給与の支払を受ける方の人数が常時10人未満の特別徴収義務者は、 住民税の納入に関して、 納期の特例の承認を受けた場合は、
年2回 (11月、 5月) で納入できます。
◆給与支払報告書等の提出
14年中に支払われた給与や年金の支払者の方は、 全ての受給者について、 給与支払報告書 (源泉徴収票) 公的年金等支払報告書を15年1月31日までに、
受給者の15年1月1日現在の住所の市町村に提出していただく必要があります。
個人の事業主の方にあっては、 確定申告をされている場合でも、 青色事業専従者の方につきましても給与支払報告書の提出が必要です。
パート ・アルバイト等少額所得者の方でも給与支払報告書を必ず提出してください。
◆給与支払報告書の作成
留意事項は次のとおりです
○給与所得者の 「住所」 「氏名フリガナ・漢字」 「受給者生年月日」 欄の記載…これらの項目で個人の特定を行いますので、 特に正確に記載してください。
○「(摘要)」欄の記載…次の場合は、 必ず記載してください。
・14年分所得税の定率減税について、 控除した年末調整定率控除の金額
・14年中に中途就職した給与所得者について、 前職分の給与等を通算して年末調整を行った場合…他の支払者が支払った給与等の金額、
徴収した税額及び控除した社会保険料の金額、 並びに他の支払者の所在地及び名称、 退職年月日
・控除対象配偶者及び扶養親族がある場合…控除対象配偶者等の名前
○ 「中途就・退職」 欄の記載
…次の場合は、 必ず記載してください。
・14年中に中途就職・退職した給与所得者の就職・退職年月日
◆給与支払報告書の総括表
本市が特別徴収義務者の方に送付いたしました総括表は、 三つ折りの圧着式ハガキになっております。
左右それぞれ開けていただき 「総括表」 「特別徴収の仕切紙」 「普通徴収の仕切紙」 の3枚を切り取って使用して下さい。
提出していただくときは、 特別徴収の仕切紙の下に特別徴収できる方の給与支払報告書を、 普通徴収の仕切紙の下に普通徴収の方の給与支払報告書を綴っていただき、
最後に総括表を一番上に置き、 それらを一束にして提出してください。
普通徴収の事業主の方には従来どおり1枚のはがき状の総括表を送付致しました。
◆提出先・問合せ先
中京区寺町御池下る下本能寺前町500番地の1 中信御池ビル4階
京都市理財局税務部法人税務課特別徴収係
213−5246
《お詫びと訂正》
第99号の 「京都市からのお知らせ」 の掲載記事の中で、 電話番号に誤りがありました。
誤 213−4246 正 213−5246
関係各位には、 大変ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
■償却資産について
◆償却資産の申告制度
地方税法の規定により、 毎年1月1日現在、 償却資産を所有されている事業者は、 当該資産について申告を行うことが義務づけられております。
◆申告書の提出期限・提出先
○平成15年1月31日 (金)
○資産所在の区役所 (支所) の固定資産税課 (課税課)
※資産の多少や異動の有無に関わらず毎年申告書を提出していただく必要があります。
◆償却資産とは
土地・家屋以外の事業の用に供することができる有形固定資産のことで、 具体的には以下のようなものです。
@構築物…舗装路面、 門、 塀、 緑化施設、 広告塔、 立体駐車場など
A機械・装置…各種製造設備等の機械及び装置、 クレーン等建築機械、 受変電設備、 機械式駐車設備、 中央監視装置など
B船舶・航空機…ボート、 遊魚船、 ヘリコプターなど
C車両・運搬具…ロードローラ、 ブルドーザなど自動車税 (軽自動車税) が課せられない 「大型特殊自動車」 及び運搬具
D工具・器具備品…金庫、 陳列ケース、 応接セット、 テレビ、 厨房用機器、 医療用機器、 理・美容機器、 看板、 ネオンサイン、
パソコン、 自動販売機など
※家屋の付帯設備の取り扱い
事業者の経理上の処理に関わらず、 固定資産税上の家屋の評価の対象とならない資産 (受変電設備、 立体駐車場設備、 ルームエアコン、
簡易間仕切り、 門、 塀、 舗装路面など) は償却資産の申告対象となります。
また、 テナントの方が施された内装、 建築設備については償却資産として申告していただく場合があります (分離課税)。
◆償却資産の課税
○評価…固定資産評価基準に基づき、
取得価額を基礎とし、 取得後の価値の減価 (定率法) を考慮して評価いたします。
なお、 評価計算後、 同一区内における課税標準額の合計が150万円未満の場合には課税されません (免税点)。
○税額…課税標準額×1.4 %
◆実地調査について
現在京都市では 「公平な課税」 の実現を目的として、 償却資産の帳簿確認調査を実施しております。
つきましては、 市役所・区役所(支所)担当課の調査につきまして、 ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
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京の文学散歩 −芥川龍之介
『羅生門』 − 右京支所 石原 牧
『ある日の暮れがたのことである。 ひとりの下人が、 羅生門の下で雨やみを待っていた』 という書き出しで物語は始まる。
龍之介が愛読していたといわれる、 平安末期の説話集・今昔物語に題材を求めた、 いわゆる王朝物と呼ばれる一連の中の代表作である。
物語の舞台は、 平安京のメインストリートである朱雀大路 (今の千本通) の南端に正門として建てられた羅城門。
794年の建都当時から、 羅城と呼べるほどの壮大な門ではなかったようだが、 それでも丹塗りの鮮やかな重層の楼閣門、 屋根の上には魚の尾のような形をした飾り・鴟尾を頂き、
前後にそれぞれ5段の石の階段を持つ堂々たる造りだったと推測されている。
推測するしかないのは、 ご存じのように、 現在は東寺から西へ約200m、 九条通を北に少し上がった公園の一角に石碑が建つのみだからである。
平安京のシンボルの1つでもあった羅城門、 当時の建築としてはかなりの高層、 風当たりが強かったのか、 817年の台風で倒壊、
再建されたものも983年の台風で再び崩壊。
以後は再建されることもなく荒れ放題で、 礎石などの一部は江戸時代になるまで放置されていたと伝えられている。
小説の舞台になった羅城門は、 この1回目と2回目の倒壊の間の頃。
きらびやかな王朝文化華やかなりし平安京のイメージとは裏腹に、 庶民の生活は贅沢な貴族文化を支えるために搾取されて厳しく、
人心が荒廃していた時代にあたると考えられている。
特に、 エリート街道まっしぐらであった時の人・菅原道真が政敵のねたみによって陥れられ、 大宰府に流されて悲嘆のうちに903年に死去。
その直後から都には雷、 大風、 火事、 地震、 あらゆる天変地異が頻繁に起こったと伝えられている。
小説の冒頭にも、 この2〜3年、 都に災いが続き、 洛中がさびれている、 というくだりがある。
物語の時代はちょうどその頃だったのではないだろうか。
余談ながら、 そんな都の異変の折には、 今をときめく安陪晴明 (921〜1005?年) の、 先輩陰陽師たちが活躍したであろうことはいうまでもない。
漢字の表記についても一言触れておこう。
名と今昔物語の中では羅城門と表記、"らじょうもん"と読む。
都の外郭の正門という意味である。
が、 芥川は羅生門と書き"らしょうもん"と読ませている。
これは現実の場所であるようなないような、 物語に架空性を持たせる意図があったのだと思われる。
荒れ果てた、 人も通わぬどころか、 死体を捨てて行く者も絶えない、 夕暮れ間近の寒々しい羅生門。
そこに雨のやむのを待つ、 いや雨がやんでも行き所のない下人が途方にくれている。
せめて雨のかからない門の楼上で夜を明かそうと梯子を上ったところ、 先客が居た。
『かつて、 生きていた人間だという事実さえ疑われるほど、 土をこねて造った人形のように、 口をあいたり手をのばしたりして、
ごろごろ床の上にころがっていた』 死骸の山にうずくまっていたのは、 なんと骨と皮ばかりになった老婆だった。
火をともした松の木切れを床板の間にさし、 死骸から髪の毛を抜いているのである。
下人がとがめると鬘にするために髪を取っているのだと、 おびえながらも話す。
これらの死人は、 そんなことをされても仕方のないような悪人ばかりだった。
自分はこうしなければ飢え死にするのだから、 見逃してくれとも懇願するのである。
ならばと下人、 『では、 おれが引剥をしようと恨むまいな。 おれもそうしなければ、 飢え死にをする体なのだ』 と老婆の着物を剥ぎ取り、
裸の老婆を蹴倒して梯子を駆け下りる。
しばらくの後、 老婆がようやく体を起こして梯子の下をのぞき込むが、 『外には、 ただ、 黒洞々たる夜があるばかりである。
下人の行くえは、 たれも知らない』 と物語は結ばれている。
さわやかな読後感には程遠い、 暗澹たる気分にさせられる内容である。
一般的な解説によると、 人間というものは食うか食われるかの境遇に陥ったとき、 結局自分のことしか考えない、 という龍之介の人間観が語られている、
といわれている。
この話は龍之介が数えで24歳のとき、 東大の3年になったばかりの頃に書かれている。
小説家としての評価は、 その後に書かれた 「鼻」 を夏目漱石が絶賛したことから、 始まっているので、 脚光を浴びた順序は
「鼻」 の後になるが、 執筆は 「羅生門」 が先。
真の意味での処女作である。 とても24歳の作品とは思えない、 良く言えば完成された悪く言えば若さのない筆致である。
芥川龍之介、 非の打ち所のない、 小説家らしい良い名前であるが、 本名は新原龍之介。
生母の体と心が弱く、 赤ん坊だった龍之介の面倒が見られなかったために、 実父は龍之介の母の実家である芥川家に養育を託す。
その後、 龍之介が11歳のとき、 母は精神病院で死亡。 そのまま芥川家の養子になったのである。
常に成績優秀だった龍之介は中学までは特に歴史が大好きで、 将来は歴史家になりたいと望んでいた。
歴史小説の方向を歩んだのも、 その頃の思いがあったのだろうといわれている。
まさに天才、 若くして名声を約束された龍之介だが、 それゆえに凡人には理解できぬ悩みを抱えていた。
いつもいつも切れ味鋭い、 斬新な小説を世に出さねばならぬというプレッシャー、 反面マンネリ化してゆく自らの作風。
加えて母譲りの弱い体が神経衰弱、 不眠症を起こし、 睡眠薬を飲みすぎるために、 胃痙攣、 腸カタルなどを併発。
そんな中でも鬼気迫る小説を書き、 自己と戦ったが、 ついに疲れ果て昭和2年7月24日の未明、 枕元に聖書を置いてわずか36歳の短い生涯を自らの手で閉じたのである。
悲しいかな現代も 「羅生門」 の時代のように、 死人からでも金品を奪う、 いや殺人を犯してでも金品を奪う輩が横行する、 殺伐とした世の中である。
当時のように生活苦からではなく、 ゲームや遊ぶ金欲しさに悪行をするという点では、 もっと性質が悪い時代である。
が、"人間なんて所詮そんなもの"とは思いたくない。
自らの命を賭してまで、 花火大会の夜に幼子の命を守ったご婦人もあったように、 人にはさまざまな可能性が秘められている。
"羅生門の下人や老婆"になるか、 人を助け自分も生かす方法を考える"智の人"になるか、
私たちの前にはいつもいくつもの道がある。
どの道を選ぶかは私たちの才覚次第。 が、 下人や老婆の道を選ぶと、 虚無が待っているだけだと、 龍之介は教えてくれている。
訪れる人とてめったにない羅城門址にて、 そんなことを考えた。
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