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京税協ニュース  

平成12年11月25日 第91号

No.1
民事再生法と…
北田副理事長のご逝去を悼む

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カナディアンロッキーの旅

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組合の動き
同好会だより

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京都この100年
ふれあい美術館

民事再生法と税理士
−税経学院短期講座を受講して−

下京地区 臼田 多惠

 去る11月9日、 監督委員として民事再生法に深くかかわっておられる弁護士の橋本皇玄先生を講師に迎え、 短期講座 「民事再生法と税理士」 が開催された。 先行きの未だ不透明な昨今の社会情勢を反映してか受講生は百名近い大盛況であった。
 講座冒頭の 「民事再生法について知りたければ条文を読んでいただくのが一番です。 しかし法律を本で読んでも実際の実務ではどうなっているのか、 実務でのノウハウがわからないと仕事にならない。 そこで今日は出来るだけ実務的な観点からお話をさせて頂きます」 という橋本先生の言葉に思わず身を乗り出したのは私だけではなかっただろう。
 以下その内容を簡単に報告する。
  「倒産」 とは一般的に経営的危機に瀕した企業に対し何らかの処置をとる必要が生じた状態をいい、 その処置の方法は再建型と非再建型 (清算型) の二つに分けられる。
 つまりひとくちに 「倒産」 と言っても再建可能な状態と不可能な状態 (破産) があるため、 本来は相談をもちかけられた際まずその企業の状態を見極めなければならない。
 しかし、 現実には相談にくる企業はすでに手のつけられない状態であり、 ほとんどが破産手続きをとる。 また仮に企業が再建可能な状態で相談にきても、 債権者の協力が得にくい等の理由で結局は破産という処置をとるケースが多かった。
 清算型の処置では、 失業者の増加や消費活動の縮小等現在の経済的不況にさらに拍車をかける。 しかし、 再建型の処置であれば経済活動に与える影響は少なく、 また債務者自身の経済的更生にも貢献するのでもっと再建型の処置をしやすくしてほしい、 という強い要望からうまれたのがこの 「民事再生法」 である。
  「民事再生法」 では再生計画案の提出まで約6ヶ月の期間があるために、 今まで債権者の協力が得にくかった元本カット等についても債権者説明会 (債権者集会ではなく、 債務者が債権者に現状を説明するため任意に行うもの) を開くなどして、 時間をかけて債権者を説得出来る。
 また、 債権者にその間の債務者の事業活動の状況をみせられるので、 債権者の理解がより得やすく、 再建への処置がしやすくなった。


◆民事再生法の概要と特徴
@条文は多いが手続きの流れは単純で簡単である。
A申立て理由が和議法等にくらべて緩和された。
  「破産の原因たる事実の生ずるおそれ」・「事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」 を理由として申立てを行うことが出来るので、 期日どおりに借入金の返済をすれば事業活動に著しく支障がでるというような状態であれば申立てを行うことが可能であり、 企業が不渡りを出すというような状況に追い込まれる前に再建に向けて手をうつことが出来る。
B債務者自身が事業経営の主体になれる。
 会社更生法においては経営者の経営権は剥奪されるが、 民事再生法においては債務者自身の経営権は剥奪されず、 通常の事業活動については今まで通り行うことが出来る。
 ただし、 あらたに借入れをおこす、 営業譲渡をする等の特別な場合には裁判所の許可や監督委員の同意が必要となる。
C担保権実行に制約がある。
 抵当権などがついている場合、 民事再生法では原則競売権を行使することが出来る。
 しかしそのことによって再生計画全体に支障をきたすような場合には、 裁判所から担保権実行の中止命令をだす。
D再生手続開始前の債権者 (再生債権者) への支払に制約がある。
 通常は債権者の理解を得て、 再生計画案に従って支払っていく。 ただし例外的に支払いが必要な場合 (支払わなければ以後の仕入がストップされる場合等) には裁判所の許可を得て支払いを行う。
 租税債権は支払い制約の適用が徐外されているため税務署から請求があった場合には支払わなければならない。 しかし実際請求してくるケースは少なく、 また請求してきても分割納付等柔軟な対応をしてくれる場合が多い。
 なお再生手続開始後に発生したものについては原則として随時支払いを行う。
E再生計画案の可決要件が他の倒産関係の法律より緩和された。
 出席債権者の過半数であって議決債権額の2分1以上という要件を満たせば可決される。 ただし、 その内容にあまりにも無理がある、 不正があると認められる等の場合には裁判所が認可しない。


◆税理士が顧客から再生手続開始の申立てに関する相談を受けた時の注意点
@債権者の協力程度を確認。
 民事再生法においては和議の場合より債権者の理解を得やすいのであまり神経質になる必要はない。 しかし再建出来るかどうかはやはり債権者の協力にかかってくるので、 事前に民事再生手続をすると通告した際の、 金融機関等の大口債権者の反応などで債権者の協力程度を確認する。
A人件費を含めた経費削減や大口の支払いをしばらく止めることにより、 相当程度の経常利益が見込めるかどうかを検討。
 借入金の返済を止めて通常の事業をおこなった場合に利益がでないようであれば事業の再建は無理である。 過去のデータをもとにした今後の売上予測とそれに対する削減後の経費をまとめた資金繰表 (申立ての際裁判所が添付書類として請求する) 等を作成して再建が可能かどうかを検討する。
B仕入れ等の取引先 (納品先を含む) が引続き取引に応じてくれるかどうかを確認。
C申立ての段階である程度具体的な再生計画案が作れるかどうか。
 裁判所が申立ての段階で、 「見込み程度でよいから再生計画案を出してほしい」 と要求してくるために必要である。
 その際の再生計画案では、 債権者の同意の有無等は考慮しなくてよい。
D顧客の事業状況を把握するため最低過去3年分の決算書等をチェック。
E可決し認可された再生計画案の履行について説明。
 再生計画の履行には監督委員等の監督があり、 計画案を守らない場合には裁判所による再生計画の取消しや再生手続の廃止もある。
 また場合によっては債務名義制度で強制執行が行われたり、 裁判所による遠慮のない職権破産も行われる。
 従って履行可能な再生計画を作り、 しっかりと履行していかなければならないということを説明する。
F簡単には取下げ出来ないことを説明。
 いったん申立てをすると取下げるためには裁判所の許可が必要で、 簡単には取下げられないということを債務者にきちんと説明しておかなければならない。


◆顧客の取引先が再生手続開始の申立てをした時の注意点
@顧客が再生債務者の債権者であったとき
・再生手続開始前の債権については原則取立ては出来ない。 (開始後の債権については随時支払われる)
・相殺権は債権の調査期間がすぎると行使出来ないので、 行使するのであればすみやかに行う。
・担保権の実行については、 その行使によって再生計画すべてが実行不可能になってしまう場合もあるので、 慎重な検討が必要である。
・債務者が破産してしまった場合には債権がほとんど価値のないもになってしまうので、 基本的には協力姿勢が必要である。
・再生債務者が財産を隠匿するなど不当な申立てをしている場合もある。 債務者の状況についての資料はほとんど公開されるので決算書や報告書、 認否書等を調べて、 問題があれば裁判所や監督委員に上申する。
・債権者説明会や債権者集会にはできるだけ出席して常に債務者の状況をチェックしておく。
A顧客が再生債務者の債務者であったとき
 特に問題はないが、 買掛金の支払いを猶予してもらいにくくなる。
 また仕入先が再生手続開始の申立てをした場合、 それを理由に仕入れを止めると再生債務者の再生に支障をきたすので、 再生債務者から取引継続の協力要請がある。


◆民事再生手続きと税理士業務
@再生手続きの流れの中での再生債務者の補助
・再生手続開始申立て理由のチェック (借入金の返済が事業活動に著しい支障をきたしているか等) 及び再生計画案の概要の検討。
・債権者集会提出用の再生計画案の作成。
A裁判所の選任する監督委員の補助・調査委員
・監督委員の補助の場合
 再生手続き開始決定前に出す報告書の作成。 ただし大会社をのぞけば実際にこの段階での税理士の関与は少ない。
 債権者集会提出用の再生計画案に関する報告書の作成。 監督委員から選任され会計士または税理士が行う。
・調査委員となる場合
 再生計画の全体を監督する監督委員とは別に、 ある一定事項に限定して調査する必要があると認めるときは裁判所が調査委員を選任する。 会計士または税理士が選任されるが現実にはまだほとんど選任されていない。


[参考] 事例に基づく手続きの進行状況
平成12年
4・21 再生手続開始の申立て
4・24 債務者審尋及び保全処分
4・26 監督命令  (裁判所が監督委員を選任)
4・27 債権者説明会   (第1回)
6・7 監督委員の報告書提出   (第1回)
6・9 再生手続開始決定  (申立てから約1か月半経過)
7・7 再生債務者の報告書提出
同日まで 債権届出期間
7・26 認否書提出期限
8・2 債権の一般調査期間   (8・16まで)
8・17 債権の査定申立て
8・30 再生計画案の提出  (申立てから約4か月経過)
9・6 債権者説明会 (第2回)
9・13 監督委員の報告書提出   (第2回)
同 日 書面による決議に付する決定   (通常は債権者集会)
10・11 再生計画案の決議及び認可  (申立てから約6か月経過)
最長平成15年10月まで監督委員による履行の監督


*実務的には手続開始の申立てをする前に債務者・裁判官・内定している監督委員が集まって今後の見通しや手続きについて事前協議を行ったうえで申立て日を決定しているために、 再生手続開始の申立て・債務者審尋及び保全処分 (債務の支払を止める)・監督命令 (裁判所が監督委員を選任する) を同日に行うなどの迅速な処理が可能。 また支払期日のせまった手形がある等の特殊事情がある場合にも、 事前協議の段階でそれを裁判所に知らせておくことにより、 支障なく処理をすすめることが出来る。
 以上のような講義ののち活発な質疑応答があった。 その際橋本先生がされたお話によると 「民事再生法においては裁判所は少々無理な再生計画であってもとりあえずやらせてみる、 というスタンスをとっている。 だめな場合はいつでも職権破産させることが出来るし、 債務者の努力によって再建出来ればそれはそれで良いことだと考えている」 とのことで、 厳しい経営状況に陥っても債務者の努力次第で再建の可能性は大きくなる、 という少し明るい話題のうちに講座は終了した。

新春講演会・新年祝賀会
日時 平成13年1月12日(金)
    講演会 15時30分〜
    祝賀会 17時30分〜
場所 京都パークホテル
講演 弁護士 豊浦伸隆 先生
     税理士として
     あなたならどうする
    関与先が民事再生法の申請をした
    場合と受けた場合のそれぞれに対応
主催  近畿税理士会京都府支部連合会
協賛  京都税理士協同組合

北田 功副理事長のご逝去を悼む
副理事長 粟 田 正 雄

 去る10月7日、 当組合の地区連絡部門担当副理事長の北田功先生が亡くなられました。
 故北田功先生と私は、 互いに国税職員であった頃からの40年近いお付き合いであり、 特にここ17〜18年は同じライオンズクラブに所属しましたし、 また当組合の副理事長に同時に就任したこともあって、 顔を合す機会も多かったので殊更大ショックを受けました。
 故先生は昭和3年に丹後の久美浜でお生れになり、 同地でご成長ののち、 昭和23年に豊岡税務署に入署され、 在職中に税理士試験に合格され、 昭和38年に国税を退職し、 税理士登録 (開業) されました。
 爾来今日迄、 税理士会の各役職 (平成7年から11年迄は下京支部長) を務められ、 又行政書士会の副会長、 TKC洛南支部長、 ライオンズクラブの会計、 第3副会長等々数多くの役職を積極的にそつなくこなされました。
 また、 故先生は、 スポーツ (ソフトボール、 ゴルフ等)、 囲碁、 麻雀他多種多芸、 何んでもござれで、 ご交誼の巾の広さは、 卓抜しておられ、 無芸大食の私など及びもつかぬ偉大な方でした。
 私にとりましては2ツ年上の兄貴分的な存在で、 何事につけ悲観的でボヤいてばかりいる私のグチに対し、 常に先達的、 且つ楽観的な見地から生来の人なつっこい丹後弁で慰めて頂いたり、 励まして貰ったりしたことが、 今となっては、 感謝の念と共に非常に懐かしく思い出されます。
 故先生のご逝去は当組合にとりまして、 有力なエンジンの一つを失ったことになり、 誠に残念ではございますが、 故先生には喜久先生と云う立派な後継者がおられ、 ここ数年、 本来の事務所業務は殆んど喜久先生が取り仕切っておられた様ですので、 この点では後顧の憂い無く、 天国に旅立たれたと存じます。
 心から故先生のご冥福をお祈りいたします。           合掌

短   歌
税理士グループ 箱根歩こう会紀行
  (平成12年盛夏)  下京地区 小田 良三
芦ノ湖を 眼下に登る 駒ケ岳 遠く小田原 初島を望む
湖尻から 湖上をわたり 箱根社へ 歩こうの会 街道を行く
天下の険 歩く古道の 杉並木 森林浴に 汗のしたたる
上のぼり下おり 箱根旧道 石だたみ 疲れし足を 励まし歩む
湯の宿や 早川の瀬を 子守歌 古道の疲れ 夢の彼方に

大同チャリティーゴルフコンペ
開催日 平成13年3月26日(月)
場 所 グランベール京都ゴルフ倶楽部
−奮ってご参加下さい−




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