京税協ニュース 平成12年1月25日 第88号
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新年のごあいさつ
理事長 上田 寛
明けましておめでとうございます。
新世紀への節目といえる2000年の記念すべき新年にあたり、 組合員皆様に初春のお慶びを申し上げます。
昨年8月の役員改選後、 役員、 委員の先生方には大変なご苦労をお掛けして、 早期に役員、 委員会を軌道に乗
せていただき、 今日では組合員先生方のご支援とご協力をいただきながら事業が計画通りに遂行され、 組合運営
が滞りなく行なわれていますことに、 心から深く感謝いたしますとともに厚く御礼申し上げます。
さて、 長引く不況のなか、 せめて年初だけでも景気の良い話で出発したいものと願っていましたが、 如何んせん、
ここに来て大変厳しい経済環境のもと、 組合の経営は収入が漸減の状況で、 今期の予算達成に一抹の不安を覚え
ることもままございます。 しかし、 なんとしても組合員先生方の活発な事業参加により、 この難局を無事乗り切ってい
きたいものと願っています。
当組合は、 設立以来27年、 その間第4期迄、 連続赤字、 第5期、 6期で累積赤字を補填、 第7期より黒字に転じ、
その後は順調に発展し、 今日の隆盛を迎えた次第でございます。
しかし昨今は、 特に外的要因から予算面に陰りが出はじめ、 問題となる項目については、 時を移さず、 関係する
委員会に対策を検討していただいています。
しかし、 事の成否は組合員各位のご理解と、 強力なご支援にかかっており、 何分のご協力を心からお願い申し上
げます。
政治経済の大変革期に直面し、 しかも組合の収入トレンドが右肩下りの局面にあって、 果して今迄の運営の在り
方で 「組合員のための組合」 として、 これからも無事発展していけるだろうか、 確たるものはありません。
総てのものが大きく変ろうとする新時代、 幕明けのこの時期に、 組合運営と経営の在り方につき、 局所的な対処
或は見直しでなく、 組織全体を見据えた改革として、 基本的な問題から検討を始めなければならないと考えており、
運営等に関する検討委員会の設置を予定しています。
最後になりましたが、 組合員諸先生のご事業のご繁栄とご健勝を心から祈念申し上げます。
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新春講演会−今こそ知恵!ユニークな発想で不況に勝つ−
これからの経済と中小企業の対応策
新年おめでとうございます。 私は昭和21年に広島県呉市で生まれました。 呉市といえば、 かつて海軍工廠があり、
あの戦艦大和もその地で建造されました。 先日テレビの特別番組で沈没した大和の姿が映し出されておりました
が、 私はそれを見た時、 日本も再び敗戦の状況に追い込まれたなという実感が湧いてきたのです。
1月号の文芸春秋にアメリカの銀行マンが我が日本の金融分野を占領したと述べております。 つまり日本の金融
は沈没したと。
では、 その仕掛人は一体誰なのか。 他でもないクリントン政権だったのです。 つまり彼の政策で1、300兆円もの日
本の金融資産が真っ先にターゲットとなった。 1昨年の春から本格的にスタートした金融ビッグバンによる規制緩和
で、 外貨預金や投資信託を購入させ、 日本の金融資産を吸い上げてしまおうという目論見です。 しかし、 これはそ
のうち大幅な損失を抱えて泣きをみる人が多く出てくる可能性が十分あるわけです。
もう一つは国際間のM&A、 つまり企業買収です。 まずは自動車メーカーで先鞭がつけられました。 今や様々な業
種が買収の標的となってます。 半導体、 液晶技術、 ロボット、 基礎素材などです。 建設業もそうです。 先頃米国のオ
ルブライト国務長官が、 日本が建設業界に参入させない場合制裁措置の発動もありうる旨の発言をしていました
が、 その意味するところは日本の中小ゼネコンに的を絞って買収を仕掛けてきているわけです。 やり方は、 先ず株
を売る。 売り尽くせばカラ売りまでしていきます。 そして、 十分に株価が下がったところで買い占めてしまう。 次の目
標は中部国際空港への参入だといわれています。
金融については、 保険、 証券、 銀行の各業界とも既に外資が入ってきていることは皆さんもご承知のとおりです。
生保業界では、 例えば東邦生命がGEキャピタルの傘下に入り、 GEエジソン生命と名前を変えました。
証券業界では山一証券がやられてしまった。 これなんかは完全に米国からの要求です。 四大証券の一つをよこ
せと言うわけなんです。 そして、 やはり株を猛烈に売り叩いた。 その果てが自主廃業だったということです。 そして山
一の従業員と店舗の一部を承継したのがあのメリルリンチだったわけです。 では、 何故こんなことをしたのか。 普通
に買うのでは大変な費用がかかる。 つまりメリルにしてみれば、 山一の破綻によってそれがタダになったということ
なのです。
次に銀行ですが、 これは富士銀行やさくら銀行などが先ずターゲットになった。 しかし、 それは大変だということで、
その時はなんとか守り切ったのです。 次のターゲットになったのが、 日本長期信用銀行だったわけです。 結局、 長
銀には4兆円もの公的資金が投入されたあげく、 リップルウッド・ホールディングに売却されました。 ここでもやはり米
国にまんまとやられてしまったという思いです。
ただ、 日本の銀行も都銀クラスの建て直しはこの3月迄にはほぼ完了するようです。
ではこれからの日本経済の先行きはどうなるのでしょうか。 そこで振り返りますと、 わが国の場合は好不況のサイ
クルが10年おきに入れ替わっている。 最近では昭和57年10月より始まったのがバブル経済であり、 平成4年8月頃
に終焉しています。 その計算でいくと、 平成14年の夏頃にようやく平成の大不況は終わりを告げるということになり
ます。 そんなことを言うと 「あと2年半も続くのか」 とがっかりされる方も多いでしょう。 しかしこの平成12年1月からの
2年半という期間は、 来るべき大好況への助走期間なのです。 それを強く意識するかしないかによって、 次の好況に
突入した時、 一気に乗っていけるかそうでないか大きく違ってくるのです。
昨年の8月、 小渕首相の主催する 「産業競争力会議」 が開かれた際に、 ソフトバンクの社長である孫正義氏が
「日本版・ニューエコノミー」 構想について説明しています。 その中で、 米国と日本のネット上でのビジネス市場規模
が比較されているのですが、 例えば、 ネットでのサイバービジネスの市場規模は、 米国が1兆2、 500億円強なのに
対し、 日本はまだ800億円程度であり、 またオンラインによる株式の売買代金の比較でも同様です。 10分の1以下で
す。 ネットビジネスの世界では米国は日本より10年先を進んでいるのです。 つまり、 米国にあっても日本にはまだな
いビジネスがそれこそたくさんある。 絶好のチャンスなのです。
エネルギー革命も起こりつつあります。 次世代エネルギーとして最も注目されているのが水素燃料です。 2005年く
らいには自動車は全て水素燃料で動くようになるかもしれない。 また、 東京ガスなどは都市ガスの代わりに電気ヒー
ターを開発している。 これも普及するのはあと五年くらいの話でしょう。 さらに、 超高齢化社会を見据えた介護ビジネ
スや介護ロボットの開発なども急ピッチで進んでいます。
いずれも壮大な市場規模です。 だからこそ、 今からの2年半でその準備をしておかなければならない。 我々もその
辺りに食い込んでいくようにしないといけないわけです。
ただ、 そのためには環境整備も大切ですが、 それには次の5つの条件が揃う必要があります。 1つは強力な指導
力を持つ政治家の存在です。 とにかく景気が回復軌道に乗るまで政治空白を作らないようにする必要があるでし
ょう。
2番目は仕掛人の存在です。 財界や官界からもそういった動きをサポートする人材が必要です。
3番目はビジョン、 要するに明確な目標を持つということです。 日本が目指す道は、 高度情報技術が進化した社
会、 また幸せで豊かな高齢化社会であるべきです。
4番目は資金、 これは1、 300兆円の金融資産があるわけですから何も問題はない。
最後5番目は、 やはり国民が一致団結しなければならない。 これはそう簡単な事ではありません。 まず重要なこと
は教育です。 今の日本は家庭からしてもうバラバラです。 そこを食い止めなければ国民が団結するような体制が出
来上がるはずがありません。
景気は間違いなく上昇局面にあります。 大いに知恵を働かせ、 来るべきビジネスチャンスに果敢に参戦する。 そう
いった姿勢を持つよう中小企業の経営者の方々にアドバイスして頂ければと思います。 本日はどうも有難うございま
した。
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